地域活性化とは?まずは地域活性化の定義や目的、注目される背景から解説します。地域活性化の定義と目的地域活性化とは、それぞれの地域が環境や文化、コミュニティなどを生かした取り組みを通し、活気ある街づくりとさらなる発展を目指していくことです。地域活性化は「地方創生」に必要な取り組みの一つでもあります。地方創生とは、それぞれの地域がより暮らしやすい環境をつくることで、日本社会を維持していくための取り組みです。「地方創生」については、別記事「地方創生とは?目的や取り組み事例など」にて詳しく解説しています。そちらも合わせて参考にしてください。地域活性化が注目される背景地域活性化が注目され始めたのは、2014年度に第二次安倍内閣が「まち・ひと・しごと創生法」を掲げたことがきっかけでした。現在、当法律は廃止され、2022年12月には「デジタル⽥園都市国家構想総合戦略」が掲げられています。「デジタル⽥園都市国家構想総合戦略」は、これまで進められてきた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を抜本的に改訂したものです。同戦略の施策が目指す方向性として、以下の4つの課題解決が挙げられています。地方に仕事をつくる人の流れをつくる結婚・出産・子育ての希望をかなえる魅力的な地域をつくる出典:デジタル⽥園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)人口減少と少子高齢化の問題に直面している日本では、地域の過疎化も進んでいます。市区町村の中には、消滅可能性都市として存続が危ぶまれている場所もあるほどです。また、地域の過疎化に伴い、高まり続ける都心への人口一極集中についても、地域の生産力低下、災害時のリスクの高まりなど、多くの課題があります。「活力ある地域社会の実現」を目指す地域活性化は、そうした日本の現状を打開する非常に重要な役割を持つ手段です。積極的に取り組みを行っている地方自治体の中には、地域活性化に成功したところもあります。また、近年は新型コロナウイルス感染症の影響で、地方で暮らすメリットが見直され始めました。さらにデジタル技術の急速な進化により、地方でもDXやデジタル実装に向けた取り組みの加速化が求められています。政府の掲げる「デジタル⽥園都市国家構想総合戦略」にも基づきながら、今後はより時代の変化にあった地域活性化が必要となるでしょう。地域活性化の課題と解決策地域活性化に取り組む上で挙げられる課題と解決策について考えていきましょう。地域の経済や社会の問題点現在日本が抱えている人口減少や少子高齢化の問題は、地域の労働力不足を招き、地域経済を縮小させる原因にもなっています。地方の企業活動の停滞・衰退、また、若い世代の都市への人口流出へとつながる課題が、さらに人口減少・少子高齢化を招くという悪循環が発生しているのです。地域活性化は、こうした課題を抱える中で、悪循環を断ち切る取り組みを積極的に行わなければならない点に難しさがあります。地域の活力や人口を維持発展させる方法地域活性化の最終的な目標は、地域の魅力を最大限に引き出すことによる「地域経済の活性化」「人口の維持発展」です。この大きな目標を達成するためには、一度のにぎわいだけにとどまらない、中長期的な取り組みが求められます。地域の活性化につながる施策として取り組むべきなのが、主に以下の3点です。・観光(例)観光客を増やすことによる、地域経済の活性化を目指す・街づくり(例)結婚・出産・子育てしやすい環境の整備、移住や起業がしやすい街づくりを行う・雇用(例)DXの推進などによる、若い世代が働きやすい環境を整備するこうした大きなプロジェクトに、自治体の一部の人間だけで取り組むことは難しいです。外部の専門家や企業と連携したり、地域で暮らしている人たちからの協力を得たりと、多くの人を巻き込みながら、長い目で地域をより良いものへと発展させていく姿勢が求められます。また、政府が掲げる「デジタル田園都市国家構想総合戦略」によれば、これらの施策に取り組む上で基盤となるのが「デジタルの力」です。地方の社会課題解決に向けた取り組みをより加速化させるために、今後はデジタル実装への取り組みも重視されることでしょう。地域活性化の成功事例ここからは、地域活性化の成功事例について詳しくご紹介します。全国の自治体の取り組み全国の自治体の中には、早期から地域活性化に取り組み、観光客・移住者・雇用の増加といった成果をあげている場所もあります。まずは、地域の歴史的資源を活用した成功事例から見てみましょう。・兵庫県丹波篠山市一般社団法人ノオトの協力のもと、古民家一体を改修。起業家や事業者を誘致し、ホテル、カフェ、工房などが立ち並ぶ城下町の街並みを実現。観光客だけでなく、20名以上の移住者、50名近くの雇用を創出した。・広島県尾道市NPO法人尾道空き家再生プロジェクトが、尾道に存在する100軒ほどの空き家を再生。地元に雇用を生みだし、150人以上の移住者が増加した。出典:内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり成功事例集」このように、地域活性化に取り組むことで観光客・移住者・雇用など、複数の課題へのアプローチが可能です。特に地域に残る歴史的資源は、複数の課題を解決する可能性を秘めており、全国各地で活用が進んでいます。カテゴリ別の事例ここからは「観光」「街づくり」「雇用」の3つのカテゴリに分け、地域活性化の事例を紹介します。・「観光」:青森県田舎館村県内有数の稲作地である田舎館村。田んぼをキャンバスとして巨大な絵を描く「田んぼアート」をスタートした。芸術性の高さから話題になり、全国から年間30万人以上の集客に成功。平成28年度は展望料収入が9,300万円に上った。・「街づくり」:佐賀県佐賀市低コストの中古コンテナを活用し、コミュニティスペースや図書室などを設置した交流広場を開設。広場を拠点に周辺の空き店舗等が店舗やシェアハウス等に生まれ変わる連鎖に。空き店舗と起業家のマッチングも生まれ、地域価値の向上につながった。・「雇用」:島根県雲南市吉田町地元農産物を活用した加工品の開発・販売のほか、住民の生活サービスの業務や地域資源を生かした観光振興など、多くのコミュニティビジネスを立ち上げ。地域産業振興・雇用拡大に貢献した。出典:内閣府「地方創生 事例集」地域活性化の進め方とポイント地域活性化を進める上で、大事なポイントを確認していきましょう。地域資源の価値を見直す方法地域活性化において重要なのが、それぞれの地域ならではの資源の価値を見出すことです。斬新さにとらわれ過ぎたり、他の地域を真似をしたりするだけでは、地域資源の可能性を引き出すことは難しいでしょう。地域がすでに持っているものは、うまく活用することで独自の地域資源となります。まずはその地域の中にある「もの」「ひと」「歴史」「自然」「場所」などに目を向けてみましょう。また、地域資源はその地域に長く暮らす地元民では気がつけないこともあります。移住者に意見を聞いたり、モニターツアーを実施して感想を得たりと、外部からの意見や反応を取り入れながら、地域資源の価値を発掘してみましょう。実効性のある具体的な施策提案地域活性化に求められる実効性とは、最終的な目標である、人口の維持発展・経済効果の向上などが挙げられるでしょう。一時的なにぎわいづくりに止まるものではなく、中長期的な視点で「地域の発展」につながる施策を考えることが重要です。しかし、そうした実効性のある施策を考えるためには、自治体だけの力では難しいでしょう。そこで有効なのが、専門的な知識を持つ組織や企業、人材と協力することです。たとえば、先述した歴史的資源を活用した成功事例では、一般社団法人、NPO法人などの協力のもとで古民家や空き家をリノベーションし、新たな価値の創造に成功しています。より実効性のある施策へとつなげていくためには、外部の組織や企業と自治体の連携が不可欠です。まとめ - 地域活性化に取り組んでみませんか日本が慢性的に抱えている人口減少・少子高齢化の問題により、地域の衰退も深刻化しています。しかし見方を変えれば、それぞれの地域が持つ独自の価値は、地域振興の可能性を秘めているとも言えます。今後はDXやデジタル技術など、専門分野に精通した外部の組織や企業と連携しながら地域活性化に取り組むことが、実効性を高める上で重要なポイントとなるでしょう。事業構想大学院大学の事業構想修士(MPD)では、企業、地域、そして社会に新たな価値を創出する「事業構想」についての研究・実践教育の場を提供しています。2年間の研究・教育の中で「地域イノベーションの事業構想」についての学習も可能です。詳細については、下記ページも参考にしてください。事業構想修士(MPD)とは