大学院とは?まずは、大学院の定義や種類、特徴について詳しく見ていきましょう。大学院の定義と目的学校教育法では「大学院」の定義と目的について以下のように定められています。「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする」参考:文部科学省「大学院の目的・役割」大学院は大学での学びを経て、さらに深い内容を研究したり、専門的な知識を身につけたりするための機関です。「修士課程」は2年間、「博士課程」は5年間の学びの中で、その道のスペシャリストになることを目指します。研究成果や論文提出、試験などによって成績が決まり、修了が認められれば「修士」「博士」の学位がそれぞれ授与されます。大学院に進学できるのは、大学を卒業したタイミングだけではありません。中には社会人入学枠を設けている大学院や、社会人向けの学びの場を提供している大学院などもあります。大学院の種類と特徴大学院の種類は、大きく以下の4つに分けられます。・学部を持つ大学院大学にある学部を基礎とする大学院では、学士課程の内容を踏まえ、さらに深い研究や専門的な知識を追求することを目的としています。(例)理学研究科(基礎:理学部)文学研究科(基礎:文学部)法学研究科(基礎:法学部)・独立研究科学部を持つ大学院に対し、基礎となる学部を持たない大学院は「独立研究科」と呼ばれます。学部を基礎としないことから、さまざまな大学、学部の卒業生が集まり、複合的な分野について研究を重ねていきます。(京都大学にある独立研究科の例)エネルギー科学研究科アジア・アフリカ地域研究研究科情報学研究科 など参考:京都大学「大学院の種類」・専門職大学院専門職大学院は、専門的な職業に就くための特別なスキルや知識を養うための大学院です。学校教育法第65条第2項では「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする」と定義されています。また、すでに社会に出て働いている人の学び直しや、新しいスキルを身につけるための学びの場としての役割も果たしています。(例)法科大学院公共政策大学院経営(管理)大学院 など・大学院大学(独立大学院)大学院大学は、基礎となる大学自体を持たない大学院のことです。大学から独立しているという意味合いで「独立大学院」とも呼ばれます。そのため、学べる分野や募集範囲など、大学院としての在り方も多様です。中には、すでに働いている社会人を対象としたカリキュラムを展開している大学院大学もあります。例えば、事業構想大学院大学は、入学までに「常勤者として満3年以上の実務経験を有する者が望ましい」と募集要項に記載しています。社会人経験のある人向けの事業構想修士(MPD)の学位取得を目指す実践教育の場を提供している点が特徴です。(例)国立:総合研究大学院大学公立:情報科学芸術大学院大学私立:事業構想大学院大学 など大学院進学のメリット大学院に進学すると、その後のキャリアにさまざまなメリットがあります。専門的な研究に没頭できる大学での学士課程は学部に分かれているとはいえ、一般教養などの学習の基礎や土台を幅広く学ぶことにも重点が置かれています。大学院ではそうした学習を踏まえ、より専門的な研究に没頭できます。自分が興味のある分野に対してより深い知識を得たい人や、とことん調べてみたいことがある人にとっては、最適な学習の場と言えるでしょう。専門職への就職が有利になる専門職では当然ながら、その仕事や特定の分野に対する専門的な知識やスキルが必要です。中には、大学院で修士または博士を取得していることが条件となっている専門職もあります。「特定の専門職に就きたい」という目標がある場合は、その分野に関するスキルが身につけられるところや、その職への就職実績のある大学院へ進学するとよいでしょう。高い専門性が身につく大学院では、特定の分野に対する高い専門性を身につけられます。専門性の高い知識やスキルは、その後のキャリアにも役立つ価値の高いものです。専門職への就職はもちろん、それ以外の職業への就職、転職の際にも有利に働く場合があります。たとえば、大学院で経営に関する学習に取り組んだ場合、経営に関する専門性は会社に戻った際に幅広く活かすことができます。転職を考えている際も、大学院で学んだ経験がある点を高く評価してくれる職場もあるでしょう。大学院進学のデメリット大学院への進学には、デメリットも挙げられます。学外の経験が乏しくなる可能性大学院では専門性の高い研究や学習ができる一方、学外の経験が乏しくなることもあります。大学院に進学しない人は、基本的に23歳から社会人となりますが、大学院に進学した人が社会に出るのは、その2〜5年後です。いわゆる「社会人経験」については、大学院に進学していない人のほうが早く身につけられるかもしれません。ただし、社会人になってから大学院に入る場合、学外の経験を得た上で学びに入れるという利点があります。社会人としての大学院進学社会人として働きながら、大学院に通う選択肢もあります。ここからは社会人が大学院に進学するケースについて解説します。社会人が大学院に進学する理由現在、世界中で「リスキリング」「リカレント教育」という言葉が注目を集めています。「人生100年時代」と呼ばれる現代は、労働人生も長期化している傾向にあります。また、テクノロジーの発達によって生活や仕事の在り方も急速に変化しており、企業や事業者には、そうした新しい時代に対応していくスキルや知識が求められているのです。社会人の大学院進学は、そうした新たなスキルや知識を学ぶ場として注目されています。社会人が大学院で学び直すことにより、企業が新しい事業に挑戦する契機となるだけでなく、新たに画期的な事業が生まれる第一歩となることが期待されています。社会人としての大学院生活の特徴社会人として大学院で学ぶ場合、仕事と学業を両立する必要があります。社会人の通学を想定している大学院では、社会人が通えるような時間割が用意されている場合がほとんどです。具体的には、平日夜、土日を中心としたカリキュラムが設定されています。また、空き時間に学習できる通信制大学院や、オンライン講座に対応した大学院もあります。いずれにせよ、スケジュールを上手に調整しながら根気よく進めましょう。社会人としての大学院進学のメリットとデメリット社会人の大学院進学にも、メリット・デメリットの両方が挙げられます。メリットとして挙げられるのは、仕事にかかわる知識やスキルの専門性を高められる点です。社内でのキャリアアップだけでなく、転職や起業を考えている人にとっても、目標達成への第一歩となることでしょう。また、自身の仕事に関連する分野の教授や研究室と繋がりができることで、新しい事業などを考える際に協力を得られるかもしれません。また、大学院では「論文の執筆」「学会などでのプレゼンテーション」「ディスカッションや意見交換」などを日常的に行います。これらの経験は、ビジネスにおけるさまざまな場面での活躍につながるスキルを育ててくれるでしょう。なお、事業構想大学院大学では、「論文の執筆」の代わりに、より実践的な事業構想計画書を策定していきます。デメリットとしてはやはり、学費・時間のコストがかかる点が挙げられます。特に社会人は、仕事と大学院通学を両立しなければなりません。モチベーションが維持できない場合は、両立が難しいでしょう。しかしながら、働きながら大学院に通い、キャリアを中断することなく専門的なスキルが得られることは一つのメリットとも言えます。将来的な目標や計画を立ててみたり、周囲に協力を得られるよう相談してみたりと、どのように両立させていくか、入学前にできるだけ考えておくとよいでしょう。まとめ - 大学院進学のメリット・デメリットと社会人向けのポイント大学院進学はデメリットもありますが、それらを乗り越えればより専門性の高いスキルを身につける貴重な機会を与えてくれます。社会人から入学する場合は特に、自身のキャリアを切り開き、目標を達成するための第一歩となることでしょう。「社会に必要な新規事業を構想し、実現してみたい」「将来的に自身で事業を始め、成功させたい」と考えている方は、事業構想大学院大学のMPD(事業構想修士)もご検討ください。MPDでは、新規事業の構想と事業の実践・育成に特化した研究課程を展開しています。経営学や専門分野の知識も並行して学習でき、さらに事業の礎となる事業構想計画書を策定します。社会人の方向けに、平日夜や土日を中心にした受講も可能です。詳細は、下記ページを参照ください。事業構想修士(MPD)とは