MBAとは?まずは、MBAの定義を理解するところから始めましょう。MBAの定義MBAとは「Master of Business Administration」の略称です。日本では「経営管理修士」「経営学修士」と訳され、大学院で経営学の修士課程を修了した人が得られる「学位」のことを指します。あくまでも学位であり、資格とは異なる点に注意が必要です。MBAの歴史と背景海外では、MBAの取得ができる大学院を一般的に「ビジネススクール」と呼びます。アメリカで世界初のビジネススクールが生まれた1881年から、その歴史が始まりました。その後1908年に設立されたハーバード・ビジネス・スクールが、経営の実践能力を培うための学習法「ケースメソッド」を開発。そこからケースメソッドをMBAプログラムの基礎とする多くのビジネススクールが徐々に普及したと言われています。日本国内に限って言えば、国内最初のビジネススクールは1962年創立の慶應大学ビジネス・スクール(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)です。ここでも、ハーバード・ビジネス・スクールのケースメソッドを基礎とした教育が行われていました。現在は他にも、日本国内でMBA取得が目指せる経営大学院が全国に普及しています。MBAの取得メリットMBAを取得することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。キャリアアップの可能性MBAでは、経営学に関する基礎から実践的な内容まで、ビジネスに関わる専門的な知識や考え方を学び、修士学位を取得できます。学んだことを実務へと活かすことで、キャリアアップの可能性を広げることも期待できます。給与の増加キャリア インキュベーション株式会社の2021年の調査によれば、アメリカではMBA取得後に300万円以上年収が上がった人は57.1%にのぼります。ただし「MBAを取得しさえすれば給与増加が期待できる」と約束されているわけではありません。基本的には、MBAによって得た知識を発揮することで、初めて給与に反映されると考えておきましょう。一方、日本では給与に直結されていないと言われています。参考:キャリア インキュベーション株式会社 2021年4月30日プレスリリースビジネススキルの習得MBAプログラムで扱うのは、経営や事業戦略に関わる内容だけではありません。マーケティング、会計学といったビジネスに関する知識から、問題解決能力や意思決定に必要な考え方まで、幅広く活かせるビジネススキルの習得が期待できる場合もあります。ネットワークの拡大MBAプログラムの受講を通して、さまざまな業種や年齢の人と出会う機会も得られます。授業での意見交換やディスカッションで刺激が得られることだけでなく、プログラム修了後にもつながる関係を築き、協力し合って新しいキャリアを目指すことも期待できます。MBAの取得方法MBAを取得するためには、大きく以下の2つの方法が挙げられます。日本国内のMBA大学院に通う海外のMBA大学院に通う大学院では、MBAの取得に必要なカリキュラムを履修する必要があります。必要な期間は約1〜2年です。費用をかけて長期間学ぶ必要があることから、スクール選びは慎重に行いましょう。MBAのプログラム内容MBAのプログラム内容は、経営学や会計学、マネジメントや組織行動などのビジネスに関する内容を中心に学びながら、経営の実践能力を培うケースメソッドを導入したカリキュラムとなっています。その中で、ビジネススキルの向上に必要なリーダーシップや国際感覚、コミュニケーション能力についても習得する機会が得られます。ビジネススクールの方針により、どんな力を重視するかは異なる部分も多いです。近年は、国際的な活躍も見据えたビジネススキルを広く身につけられる内容や、進化するテクノロジーに対応したカリキュラムを組んでいるスクールも見られます。MBAの種類会社に勤めながら通うことが想定されている社会人向けのMBA大学院には、実際に通う以外にもいくつか履修方法が用意されている場合があります。フルタイムMBAとパートタイムMBAまず、MBAプログラムの履修方法は大きく「フルタイム」「パートタイム」に分けられます。フルタイムで履修する場合は、一般的な大学院と同じように、平日を中心にビジネススクールに通います。仕事に就いている場合は両立が難しいため、休職のような形で仕事を離れる必要があるでしょう。一方、パートタイムの場合は、平日夜や土日を中心に履修できるプログラムが組まれています。仕事を続けながら、並行して学びたい方向けの受講方式です。オンラインMBAMBAプログラムは、通学による履修以外にも、オンラインで履修することが可能です。オンラインであれば通学する手間が省けるため、時間や場所に制約がある方に向いています。また、海外のビジネススクールの中にも、オンラインに対応している大学院もあります。オンラインMBAは、日本国内からも受講可能です。専門職MBAMBAは、専門職大学院でも取得が可能です。専門職大学院で取得するMBAは「経営学修士(専門職)」または「経営管理修士(専門職)」と呼ばれます。専門職大学院は、学校教育法第99条にて「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を担うことを目的とするもの」と定義されています。授業方法に関して「少人数教育を基本とし、双方向・多方向に行われる討論や質疑応答、事例研究、現地調査等により実践的な教育を行う」と制度上決められている点が、一般的な大学院と異なる点です。MBA取得後のキャリアパスMBA取得後のキャリアパスは、将来的な目標によってさまざまな選択肢があります。企業の経営層への道一つは、MBAで得た知見を企業経営に活かす道です。現在勤めている会社の経営層や企業幹部に入ることで、キャリアアップを目指すこともできます。世界のトップMBAスクール世界には、ビジネススクールをさまざまな角度から評価し、ランキングを行っている評価機関があります。中でもイギリスの経済誌「THE FINANCIAL TIMES」、イギリスの大学評価機関による「EQ」で、上位に入っている世界トップの大学は以下のとおりです。「THE FINANCIAL TIMES」MBA2023ランキングコロンビアビジネススクール(アメリカ)インシアード(フランス/シンガポール)IESEビジネススクール(スペイン)参考:「THE FINANCIAL TIMES」Business school rankings MBA 2023「EQ」MBA2023ランキングスタンフォード大学院(アメリカ)ハーバード・ビジネス・スクール(アメリカ)ウォートンビジネススクール(アメリカ)参考:「QS Global MBA Rankings 2023」MBA取得を検討する際の注意点MBAの取得を検討する場合は、注意すべき点もあります。MBAが必要な人、そうでない人経営学の専門的なスキル修得を目的としているMBAは、将来的に経営ポジションで活躍したい方や、起業を考えている方にとって有益なものとなるでしょう。また、専門的なビジネススキルを磨きたい、ネットワークを広げたいといった方にも適した環境です。ただし、MBAプログラムを受講しなければ、必ずしもビジネススキルが身につけられないわけではありません。日本国内には、MBA取得を目指す経営大学院以外にも、さまざまな特徴を持ったビジネススクールが存在しています。たとえば、事業構想大学院大学が展開するMPD(事業構想修士)プログラムでは、未来のよりよい社会を、事業を通じて構想し、実現する力の育成を目指して学習します。新規事業を立ち上げたい、起業したい方にとってはMPDのカリキュラムがマッチする可能性が高いと言えるでしょう。ビジネススクールの受講を検討する場合は、自身の学びたいことや身につけたいスキルに合った教育機関を選択することが重要です。MBA取得のタイミングMBAを取得する目的は、それぞれの目標や状況によって異なります。たとえば、20代でMBAプログラムを履修し、新卒・第2新卒、または転職にMBAを生かす考え方もあります。ただし20代は、実務経験とMBAでの学習がリンクしづらい点がデメリットです。学んだことをどうその後に活かしたいかや、明確なビジョンがいっそう重要となります。日本では、会社での実務経験を豊富に積んだ30代以上でMBAの取得を目指す方が多い傾向にあります。30〜40代の場合は、管理職への登用など社内でのキャリアアップだけでなく、起業といった目標のある方にとっても良いタイミングと言えるでしょう。MBAの将来的な展望最後に、MBAに関する今後の展望について解説します。ビジネス界におけるMBAの価値の変動ビジネススクールの増加や、オンライン教育の発展などにより、MBA教育も以前より大きく普及しています。少しずつ取得者が増えているため「MBAを取得さえすればキャリアアップできる」と考えるのは危険です。取得すること自体の価値を考えるのではなく、得た知識をどう活かすかという、取得後の動きが非常に重要となります。MBAのカリキュラムの進化MBAカリキュラムは徐々に進化し、教育内容もスクールによって独自の特徴を持たせたものが増えています。ディスカッション重視のものから、時代の変化に合わせてテクノロジーへの知識を重視したもの、少人数制、オールイングリッシュのプログラムまで、それぞれ異なる個性があります。日本国内からでも参加しやすい海外のオンラインMBAが普及している点も、世界基準のMBAを学びたい人にとっては大きなメリットでしょう。まとめ - MBAに関する総括MBA取得は、企業経営にかかわる高度な専門知識を学ぶ機会となります。一方で、取得することがゴールとなっていたり、取得する目的や将来的にどう活かしたいかといったビジョンが不明確であったりすると、学びを十分に活かすことは難しいでしょう。現在はMBA大学院以外にも、多様なビジネススクールが展開しています。「新規事業を構想してみたい」「将来的に自身で事業を始め、成功させたい」と考えている方は、事業構想大学院で取得できるMPD(事業構想修士)もご検討ください。MPDでは、新規事業の構想と事業の実践・育成に特化した研究課程を通し、経営学や専門分野の知識を並行して学習できます。詳細は、下記ページを参照ください。事業構想修士(MPD)とは