課題発見力とは?まずは、課題発見力の定義や、必要とされる理由から確認していきましょう。課題発見力の定義経済産業省の『「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料』では、課題発見力について「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義しています。同資料では「社会人基礎力」を「前に踏み出す力」「チームで働く力」「考え抜く力」の3つの能力に分け、課題発見力を「考え抜く力」を構成する能力要素の一つとしています。つまり課題発見力は「人生100年時代」を生きる社会人に必要とされる力として重視されているのです。課題発見力が必要とされる理由ビジネスに求められるのは、課題を「解決」する力だけではありません。そもそも、解決すべき課題を「発見」できなければ、現状を変えていくことができないからです。特に、現代社会は変化の著しい時代といわれています。組織や事業も、時代の変化とともに発生する課題や、求められる変化に柔軟に対応していくことが不可欠です。表面的には何も問題がないように見える状況の中でも、将来的なリスクにつながる課題が隠れていることもあります。課題発見力は、現状を改善してさらなる成長を目指したり、潜在的な課題を見つけ出すことで将来的なリスクを未然に防いだりするために欠かせない力の一つです。課題発見力と他のスキルとの関連性課題発見力と混同されたり、比較されたりするものとして「課題解決力(問題解決力)」が挙げられます。課題発見力と課題解決力の違いは、すでに明らかになっている目の前の課題(問題)を解決するために原因を分析し、解決策を考え、行動・実践していく力です。一方、課題発見力は「現状の課題を見つけ出す力」であり、課題解決力とは異なるスキルとなります。しかし、2つの力は切り離して考えることができません。見つけた課題を提示するだけでは、本当の意味で組織や事業に貢献することはできないでしょう。課題を発見したら、その後は解決に向けて動く必要があります。「見つけた課題を解決して現状を変える」という、真の目的を果たすためには「課題発見力」と「課題解決力」の両方が備わっていることが重要です。課題発見力を持つ人の特徴課題発見力とは、具体的にはどんな力なのでしょうか。ここからは、課題発見力を持つ人の特徴について詳しく解説していきます。常に現状を分析できる課題発見力を持つ人は、一見課題がないように見える状況の中でも、潜在的な課題を自ら見つけようとする姿勢が備わっています。新たな課題を見つけるためには、日常的に現状を見つめ、さまざまな視点から分析する習慣が必要です。例えば、ノルマを達成している状況でも「さらに成果を伸ばすためにはどうすればいいか」という視点で考えれば「日常業務の中に非効率なフローがある」といった、新たな課題が見つかることもあります。このように、常に現状に改善の余地がないかを考える姿勢を持つことで、持続的に成長を続けられることが、課題発見力のある人の強みです。目的を明確化できる課題の発見に欠かせないのが、目的を明確化して捉える力です。発生する課題は、目的に応じて変化します。目指す方向性や目的を軸にして現状を分析することで、おのずと課題も見えてくるはずです。逆に目的が明確でない状況では、現状とのギャップも明確化できません。企業や組織、そしてビジネスパーソンが成長を続けるためには、常に目的や理想と現状のギャップを見つめ、その中にある課題を見つける姿勢が重要です。課題発見力を高める方法課題発見力を高めるためには、どんな方法があるのでしょうか。現状を的確に分析するスキルをつける課題発見力の向上に欠かせないのが、現状を的確に分析するスキルです。ビジネスにおける課題は、大きく分けて3つに分類されます。・発生型:すでにマイナスの影響を及ぼしている課題(例:顧客からクレームが発生している)・設定型:設定した目標や目的に対し、発生している課題(例:売上目標が未達になっている)・潜在型:表面的には見えていないが、今後発生すると考えられる課題(例:人材不足、新サービスの台頭が懸念される)発生型・設定型の課題については、すでに表面的に課題が現れています。一方、潜在型の課題を発見するためには、詳細な現状分析が必要です。現状を的確に分析するためには、データやこれまでの結果が参考になります。事業やプロジェクトに関する細かいデータや数値を記録し、その事実から見えてくるものや課題を探っていく習慣をつけることで、課題発見力の向上につながるでしょう。新たな課題を見つけ出す視点・思考を身につける新たな課題を見つけ出すためには、現状や前提を幅広い角度から捉えるための視点や思考を意識することも重要です。課題発見に役立つ視点や思考については、以下のようなものが挙げられます。ゼロベース思考:常識や前提を疑う考え方クリティカルシンキング(批判的思考):自分の考え方や物事を批判的に捉える考え方仮説思考:有力な仮説を立て、検証していく思考法未来志向:未来に目標やビジョンを定め、それに従って行動する考え方こうした視点や思考は、日頃から意識することで徐々に身につけることができます。普段、当たり前だと思っている考え方や業務に疑いを持ってみたり、目標と現状のギャップを可視化してみたりすることで、課題を探る視点・思考を少しずつ定着させましょう。事前に課題を見つけるスキルをつける課題が見つからないような現状であっても、時間の経過や時代の変化によって、必ず状況は変わっていきます。今後、会社や事業がどんな課題を抱えるかを予測し、事前に課題を見つけられれば、今後起こりうる課題を未然に防いだり、時代の変化に適応した新事業を生み出したりすることにもつながるでしょう。事前に予測できる潜在的な課題の具体例として、以下のようなものが挙げられます。社員のライフステージの変化や新規事業立ち上げなどで、人材不足に陥る可能性がある自社の既存事業の市場の中で、売上を伸ばしている競合他社がいる顧客満足度が高止まりしているこのように、自社の事業や組織、顧客、業界など幅広い視点を持って、潜在的な課題が隠れていないかを積極的に探そうとする姿勢が必要です。課題発見力を身につけるためのポイント課題発見力は物事や現状の見方、思考を変えていくことで、誰もが少しずつ身につけられるスキルです。個人でできることとしては、実務の中で先述した思考法や視点を意識してみてください。日頃当たり前に行っている一つ一つの業務に対する前提や常識を疑ってみたり、成果がわかるもののデータや数値を細かく分析してみたり、身近なところから取り組んでみましょう。従業員や組織全体の課題発見力を高めたい場合は、研修やグループワークなどを積極的に取り入れることも有効です。課題発見力が必要とされる理由を従業員に共有した上で取り組むことで、より高い効果が得られることでしょう。課題発見力の実践ここからは、課題発見力を実践の場で生かす方法について考えていきます。チームや組織での課題発見事業やプロジェクトを円滑に進める上で、チームや組織の動きは随時改善していくことが求められます。こうしたチームや組織においても、課題発見力を生かすことが可能です。表面的には問題がない状態でも、チームや組織が掲げる目標と照らし合わせ、潜在的な課題がないかを考える機会を定期的に用意しましょう。毎週、毎月など、一人一人が定期的に課題を複数挙げるミーティングの前に課題を話し合う時間を設ける複数の人間が集まるチームや組織だからこそ、幅広い角度の課題が発見できるほか、一人一人の課題発見力を育成する機会にもつながります。個人としての課題発見の実践方法課題発見力は、個人のビジネススキルやキャリアを考える上でも役立ちます。自身の持つ目標や、理想の自分に近づくために、現状に改善できる課題がないかを積極的に探してみましょう。現状に満足せず、課題と向き合う姿勢が自身を大きく成長させてくれるはずです。また、課題発見力は、どんな仕事や職種においても必要とされるスキルの一つです。課題発見力を発揮した経験は、キャリアアップを目指す場面でも積極的にアピールできます。課題発見力を活かしたプロジェクトマネジメントプロジェクトマネジメントでは、与えられたリソースを最大限生かして、効率よく事業を成功に導くことが求められます。こうしたプロジェクト管理においても、課題発見力が重要です。事前に起こりうる課題を発見しながら、先読みしてプロジェクトを管理できるのが理想的なマネジメントといえます。目的を見すえながら、現状のデータやチームの動きを分析して課題を見つけていき、効率的にプロジェクトを動かしていきましょう。また、プロジェクトをともに進めるメンバーからヒントを得ることも重要です。普段のコミュニケーションから業務の中で感じていることを細かく聞き出したり、率直な意見や気持ちを話しやすい雰囲気を目指したりする姿勢も、課題発見に生かせるでしょう。まとめ - 課題発見力のスキル向上を目指しましょう課題発見力は、組織や事業、そして個人が成長を続けていくために欠かせないスキルの一つです。表面的な課題が見えない場合でも、常に現状を疑いながら改善の余地がないかを考える姿勢が求められます。日頃から思い込みによる思考にならないように注意して前提を疑ってみたり、考え方や物事をさまざまな視点から捉えるように意識してみたりしながら現状と向き合い、スキルの向上を目指してみましょう。現状を分析し、潜在的な課題を発見することは、新規事業を生み出す第一歩にもなります。事業構想大学院大学は、新事業で未来を作る「事業構想修士(MPD)」を取得できる専門職大学院です。経営、マーケティング、イノベーション、アイデア発想など、事業構想に不可欠な専門分野を持つ教授やゲスト講師による講義・実践教育を通し、未来のよりよい社会に貢献する事業を構想・実現する人材を育成しています。詳細は、下記URLをご参照ください。事業構想修士(MPD)とは