地方創生とは?まずは、地方創生の定義や目的から確認していきましょう。地方創生の定義と背景財務省北陸財務局によると、地方創生とは「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すもの」と定義されています。参考:財務省 北陸財務局「地方創生とは?」現在、日本は人口急減・少子高齢化、そして東京圏への人口一極集中という大きな課題を抱えています。地方の衰退・消滅をまねくこれらの課題解決を目指し、各地域がそれぞれの特徴を活かした持続的な社会を創生するための政府の取り組みが「地方創生」です。地方創生の実現には、それぞれの自治体が地域の活性化に取り組むことが欠かせません。地域活性化については、別記事「地域活性化の課題や進め方のポイント・事例など」にて詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。地方創生の目的と重要性人口減少・少子高齢化は、地域の過疎化・衰退と、東京圏への人口一極集中の問題に直結しています。こうした課題に対する危機感から、2014年に政府が掲げたのが「まち・ひと・しごと創生法」です。現在、当法律は廃止されていますが、現在も地方創生の取り組みは続いています。2022年には、社会情勢の変化やデジタル技術の急速な発達に対応し「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が掲げられました。同戦略にて設定されている、地方創生の施策の方向性は以下のとおりです。◼︎国によるデジタル実装の基礎条件整備デジタル基盤の整備デジタル人材の育成・確保誰一人取り残されないための取組↓◼︎地方の社会課題解決地方に仕事をつくる人の流れをつくる結婚・出産・子育ての希望をかなえる魅力的な地域をつくる出典:デジタル⽥園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)政府は「デジタル⽥園都市国家構想総合戦略」を「2023年度から2027年度までの5か年の新たな総合戦略」とし、デジタルの力を活用した地方創生の加速化を目指しています。このように地方創生は、地域社会の存続、そして日本社会の存続にかかわる問題として、政府から重視されている取り組みの一つです。自治体はもちろん、社会課題の解決を目指す企業や、日本国民全員が関心を向けるべき課題とも言えます。地方創生の課題と解決策政府が地方創生に注力している一方、具体的な成果につながっていない自治体も少なくありません。ここでは、地方創生の課題と解決策について考えていきましょう。地方の経済や社会の問題点地方創生の問題点として挙げられるのが「地域が地方創生に対する取り組みを正しく行えていない」「短期的な視点での取り組みに収束している」点です。地方創生の目標は、地方の活力を取り戻し、人口を維持発展させることです。短期的な視点での施策では、一度のにぎわいや盛り上がりで終わってしまい、その後の長期的な成長が見込めません。中長期的な視点で「地域の発展」につながる施策を考える必要があります。地方の活力や人口を維持発展させる方法近年は、新型コロナウイルス感染症の流行や、デジタル技術の進化、DXなど、社会情勢が大きく変化を遂げています。特に感染症禍がきっかけで、テレワークなどの新たな働き方や地方移住に関する関心が高まるなど、国民の意識・行動に少しずつ変化もみられているのです。こうした社会の変化をふまえ、地方自治体には「デジタル技術活用」の視点を軸とした地方創生への取り組みが求められています。デジタルを活用した上で、地方の社会課題解決を目指すのが、現在の政府が掲げる施策です。とはいえ、地方の活性化やデジタル化の推進を、自治体だけで進めることは困難な現実があります。そこで大きな役割を果たすのが、地方の社会課題解決が期待できる事業を行う企業です。企業が自治体と連携し、社会課題の解決につながる新規事業を生み出すことで、地方創生の大きな進展が期待できます。日本の未来を左右する、地方に目を向けた新規事業を構想することは、地方の抱える課題解決の大きな一歩につながるでしょう。地方創生の成功事例ここからは、地方創生に積極的に取り組んだ自治体の成功事例を見てみましょう。全国の自治体の取り組みまずは、複合的な取り組みから人口増加や経済の活性化につながった事例から紹介します。・富山県「地方拠点強化税制」「企業立地促進法」を活用。積極的に企業を誘致し、地域経済の活性化、女性・若者の活躍、移住・定住促進、地域雇用創出につなげ、複合的に地域の課題の解決を図っている。またコンパクトシティ政策として、経済・福祉・農業・公共交通活性化など幅広い分野の取り組みを実施している。・北海道夕市人口減少に対応したコンパクトシティづくりを推進。分散する地域を集約するため、児童館、図書館等の多機能を備えた複合型拠点施設を整備するなど、節約型のまちづくり、エネルギーの地産地消を進めた。富山県、夕張市に共通しているキーワードは「コンパクトシティ政策」です。交通機関、商業施設、公共サービスなどの生活サービス機能と居住を集約し、人口を集積させることで、行政コストの削減と生活利便性の向上・地域経済の活性化を目指す政策です。地方創生の施策の一つとして注目されています。出典:地方創生「事例のご紹介」※内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進事務局によるWebサイト地域資源の活用と地域の魅力次に、地域資源を活用した成功事例についても紹介します。・山梨県甲州市ワインの国内生産量の約4割を占める山梨県内。県内のワイナリーの半数が集積する甲州市において、ワインのブランド力向上や、成長が期待されるワイン観光をテーマとするまちづくりを推進。特にワインツーリズムは外国人観光客にも認知され、国内外の多くの観光客が参加している。・滋賀県守山市自転車で琵琶湖を一周する「ビワイチ」による、サイクルツーリズム拠点づくりを推進。琵琶湖畔の宿泊施設内に、世界的自転車メーカーの店舗を誘致するほか、中心市街地の飲食店や観光施設にサイクリストを呼び込む環境づくりを行い、市域全体の活性化を進めている。出典:地方創生「事例のご紹介」※内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進事務局によるWebサイト地域にはそれぞれ「もの」「ひと」「歴史」「自然」「場所」など、独自の価値があります。それらの価値を発掘し、最大限に活用する方法を目指すことも、地方創生にとって欠かせない重要な視点の一つです。まとめ - 地方創生の取り組みについて地方創生は、地域が自律的・持続的な社会へと変化していくための取り組みです。人口減少・少子高齢化、都心への人口一極集中が進む日本にとっては、最優先の課題ともいえます。各自治体が地域のもつ可能性を引き出す取り組みを行うことはもちろん、国民全体が地域課題に対して関心を持つこと、企業が自治体と連携し、社会課題解決に向けた新規事業を構想する姿勢も求められます。事業構想大学院大学では「新事業で未来を創る」人材を育成する事業構想修士(MPD)の教育・研究を行っています。事業構想に不可欠な専門分野を持つ教授や年間150人を超えるゲスト講師による講義を通し、今後日本社会に求められる事業構想に必要な力を身につける専門職大学院です。地方創生に不可欠な取り組みである、地域活性化に関する講義も展開しています。詳細は、下記ページもご覧ください。事業構想修士(MPD)とは