第二創業とは?ここでは「第二創業」の詳しい定義や、注目される背景について解説します。第二創業の定義と特徴第二創業とは「企業がこれまでとは違う分野の新事業をスタートすること」といった意味の言葉です。実際は、事業承継で新しい経営者が就任した際に、新事業を始めることを指して使われる傾向にあります。中小企業庁などの政府の資料でも、主に「事業承継をきっかけに、後継者が新たに取り組む事業」のことを第二創業と呼んでいます。第二創業が注目される背景現在、日本では中小企業の廃業率の高さが問題視されています。その原因の一つとして挙げられるのが「経営者の高齢化」です。経営者の高齢化が進んでいる状況は、早期から事業承継の準備をしていない会社が多いことを示しています。事業承継の関連ワードとして第二創業が注目される背景には、実際に第二創業に取り組んだ中小企業が成長を遂げていることが挙げられます。中小企業庁の2023年度版「中小企業白書」内の「事業承継実施企業の承継後の売上高成長率」では、事業承継を行った会社は、数年間で同業種の売上高成長率の平均値を上回る傾向にあることが明らかになっています。つまり第二創業は、事業承継をポジティブに捉えることで企業を持続させながら、衰退期を打開するきっかけにもなる手段として注目されているのです。第二創業と事業承継ここからは、第二創業と事業承継の関係性について詳しく解説します。事業承継と第二創業の関係性一般的に、企業には「ライフサイクル」があるといわれています。事業を立ち上げたばかりの段階の「創業期」成長して長期戦略へとシフトしていく「成長期」成長ピークを迎えて売り上げが安定する「成熟期」ゆるやかに成長や売り上げが鈍化していく「衰退期」新しい事業に挑戦する第二創業は、衰退期を打開するための有効な手段です。特に、衰退期に入っている企業は、経営者が高齢化しているケースも多く見られます。衰退期の企業が事業承継を契機とし、後継者の資質を生かした第二創業を行う場合が多いことから、事業承継と第二創業は同じ文脈で語られる傾向にあるのです。事業承継については、別記事「事業承継とは? 知っておくべき基礎知識や成功のポイントなど」で詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。M&Aと第二創業新しい事業に挑戦する第二創業の方法の一つに、M&Aがあります。M&Aとは、株式や事業を外部の経営者に売却し、会社の経営権を譲渡することです。経営権を第三者に渡すため、事業承継の意味合いもあります。企業同士の技術やノウハウが活かせるM&Aは、第二創業の可能性を大きく広げられる手段の一つです。第二創業のメリットとデメリット第二創業を行う上で期待できるメリット、懸念しておくべきデメリットについて解説します。経営改善の可能性事業承継をきっかけとして行う第二創業が、経営改善につながるケースは多いです。後継者の資質を活かし、時代の変化に合わせた新事業に取り組めば、企業の新たな可能性が広がることが期待できます。特に第二創業の場合は、何もないところから起業するわけではありません。これまで積み重ねてきた既存事業がある中で新事業に取り組むため、創業時に比べて少ないリスクで挑戦できる点もメリットです。資金調達とリスク第二創業を行うためには、もちろん資金も必要です。第二創業の資金調達は、既存事業の実績を活かすことで、金融機関からの信用が得られやすいといわれています。できる限りリスクを抑えるために、政府が用意する第二創業向けの補助金を活用する方法もあります。条件や審査などがありますが、クリアして補助金が受けられれば資金的なリスクを抑えられるでしょう。もちろん、それでも新事業が必ずしもうまくいくとは限りません。第二創業のリスクを抑えるために最も重要な方法は、既存事業で培ってきたものを最大限に活用できる事業を選択することです。これまで築いてきたノウハウが活かせる事業であれば、リスクも抑えられるでしょう。第二創業の成功事例と失敗事例具体的に、第二創業の成功事例と失敗事例について見ていきましょう。成功事例の分析事業承継のタイミングで、第二創業を行った企業の成功事例を紹介します。・アルファ電子株式会社(電気機械器具製造業)東日本大震災の影響で大手取引先を失い、業績が悪化していた時期に前社長の次女が事業承継。既存の主力事業は業績が不安定であったことから、補助金を活用しながら新たに柱となる事業として、米粉麺の自社開発に取り組みました。徐々に既存事業との相乗効果も発揮され、業績回復につながったそうです。同社の成功のポイント従業員への理解や協力を得ることに注力した従業員との信頼関係を構築すべく、売上高などを開示し経営の透明性を高めた自社ECや自社工場の立ち上げの際など、国の助成金や補助金を随時活用した出典:中小企業庁 2023年版「中小企業白書」第2部「変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業」第2章「新たな担い手の創出」電気機械器具製造と米粉麺はまったく異なる事業のように感じますが、同社は「受託製造業中心の業態からの脱却」「従業員の長期雇用」「地元への貢献」の3つの理由・目的を明確化し、従業員に理解・協力を得ることや、経営の透明化に力を入れたことが、従業員一丸となって第二創業に取り組めた大きな要因と考えられます。また、同社は他社に製造を委託して販売する段階を経て、自社製造へと切り替えていく形で、段階を踏みながら事業を拡大しています。資金調達に関しても、助成金・補助金を最大限活用しました。リスクを回避できる方法を選びながら、事業を徐々に拡大していった点も成功のポイントです。失敗事例とその教訓第二創業の失敗事例として多く挙げられるのが、以下の2つです。従業員から新規事業に対する反発があり、協力が得られない既存事業との相乗効果が得られない事業承継後のタイミングでは、後継者と従業員の信頼関係が十分に築けていないことも考えられます。従業員が新事業に対して前向きでない場合は、成果につながりづらいでしょう。経営者は、従業員の率直な意見にも耳を傾けながら、理解や協力を得ることに尽力する姿勢が求められます。特に、既存事業との相乗効果が得られるかどうかは、業績を高めることだけでなく、従業員の納得感を得る上でも重要です。相乗効果が感じられない状態が続けば、負担の増加やモチベーションの低下を招き、業績悪化につながります。第二創業で立ち上げる事業に関しては、既存事業の相乗効果が期待できるものを検討することも、成功のポイントといえるでしょう。まとめ - 第二創業を成功させよう事業承継に伴う第二創業は、企業がさらに成長に向かうための重要な機会になります。中小企業における経営者の高齢化が進む日本において、いかに第二創業を成功させるかが企業を長く維持する鍵となるでしょう。メリット・デメリットや成功のポイントを理解した上で、検討してみてください。事業構想大学院大学は、新規事業を構想するための研究・実践に特化した、日本で初めての教育機関です。MPD(事業構想修士)の学位が取得できる教育と研究を通し、新規事業を生み出せるスキルを持った人材を育成します。カリキュラムに「第二創業・第三創業」の科目を用意し、事業承継を見据えた経営者や後継者に必要な資質についても学習できます。詳細は、下記ページをご参照ください。事業構想修士(MPD)とは