起業するには? 基本的なステップまず、起業するための基本的なステップから解説します。起業の意義と目的の明確化起業とは文字通り、新たな事業やビジネスを始めることです。起業すること自体は、手続きを踏めば成立します。大切なのは「起業すること」ではなく「起こした事業を成功させること」を目標に据えることです。起業して事業を成功させるのは簡単ではなく、大変な局面も多くなることでしょう。漠然と「起業したい」という思いだけでは、いざ起業した後に方向性を見失ってしまいます。まずは「なぜ起業したいのか」「事業を通して何を実現したいのか」を明確化しましょう。サービスや商品の内容だけでなく、事業を通じて「どう社会に貢献するか」まで見据えた意義や目的であることが理想的です。目的と意義が明確であればあるほど、難しい局面でも軸を見失うことなく、事業を長く続けることにつながります。アイデアの生み出しと市場調査そんな起業や新規事業の立ち上げに欠かせないのが「アイデアの生み出し」です。新しい事業の種は「実現したい理想の社会」の中に落ちています。「今の世の中に必要なものは何か」「未来に向けて何が求められているか」を考え、さまざまなアイデアから事業の種を見つけることが、新規事業を始める第一歩となります。「新規事業につながるアイデアを生み出す方法を学びたい」という人は、専門的な教育機関で学習を積むことも一つの手段です。事業構想大学院大学では、この「新規事業の構想」に注力したカリキュラムを展開しています。実際に数百以上の「アイデア」を生み出しながら、最終的なアウトプットとして「事業構想計画書」をプレゼンテーションするまでのプロセスを学ぶことが可能です。未来を見据えた、新しい事業を創出・育成する力を養います。個人事業主と法人設立の違い起業する方法として挙げられるのが「個人事業主としての開業」「法人の設立」です。ここからは、この2つの起業形態を比較しながら解説していきます。個人事業主のメリット・デメリット個人事業主とは、特定の会社などに属さず「個人で事業を営む人」を指します。法人設立よりも簡単な手続きかつ、費用をかけずに開業できる点がメリットです。また、税金についても確定申告で対応できるため、法人と比較して少ない手間で管理できるでしょう。一方で、その分社会的信用度が法人と比べて低くなりがちな点はデメリットと言えます。また、節税の面でも法人の方が有利です。まずは個人事業主として開業し、事業がある程度大きくなってから法人化するケースもあります。法人設立のメリット・デメリット法人=会社を設立することで、社会的信用が高まる点は大きなメリットです。クライアントからも信頼されやすいだけでなく、節税の面でも法人のほうが対策しやすい傾向にあります。例えば「赤字繰越」も、個人事業主は最長3年間であるのに対し、法人は最長10年間繰り越すことが可能です。その分、法人は設立するまでに多くの準備を要します。複雑な手続きや多額の資金調達が必要となる点は、個人事業主と異なる点です。また、設立後の会社運営や、会計処理・税金に関しても、専門的な知識が必要となります。法人として事業を行う場合は、専門家の力を借りることも重要です。会社設立時にプロからサポートやアドバイスを受けたり、設立後に税理士や司法書士などの力を借りたりすることもできます。起業するための具体的な手続きここからは、起業のために必要な手続きについて具体的に解説していきます。個人事業主としての手続き個人事業主として開業する場合は、以下の2つの手続きが必要です。必要な書類を提出するだけのため、法人設立と比較すると手間がかかりません。・管轄の自治体の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出・都道府県税務署に届出書を提出(事業内容によっては不要)「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出は、開業から1ヶ月以内に行う義務があります。その際「青色申告承認申請書」も合わせて提出しておけば、確定申告の際に控除額が最大65万円になる「青色申告」が可能となります。また、個人事業税の発生する事業内容である場合は、都道府県税事務所にも届出が必要です。細かい書類の内容や条件は都道府県によって異なるため、自身の管轄の都道府県税事務所で必ず確認しましょう。法人としての起業手続き個人事業主の開業と比較して、法人設立の場合は必要な手続きが多岐にわたります。定款を作成し、認証を受ける法務局で設立登記をする法人設立届出書を各所に提出する「定款」とは「組織・活動について定めた根本規則」のことです。法人設立の第一歩として、この定款を作成して公証役場で認証を受ける必要があります。次に、法務局で設立登記を行います。ここでは、認証を受けた定款と「設立登記申請書」が必要です。ここで登記が受けられれば、正式に会社が成立することになります。その後、設立した日から2ヶ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出します。ここでも、認証を受けた定款などの提出が求められるため、忘れずに用意しましょう。起業に必要な資金とその調達方法ここからは、必要な資金や調達方法について解説します。起業にかかる平均的な費用個人事業主として起業する場合、業務に必要な費用を用意するだけでよく、開業時に費用は必要ありません。一方で、法人の場合には、設立の際にも費用が必要となります。【法人設立の際に必要な費用】・法定費用(定款用収入印紙代、定款認証費用、謄本手数料、登録免許税)・資本金法定費用は、設立する会社の形態によって異なります。株式会社の場合は約25万円、合同会社の場合は約10万円が目安です。【法定費用の内訳】・定款用収入印紙代(電子定款の場合は不要)4万円・謄本手数料250円/1ページ・定款認証費用株式会社:資本金によって異なる(100万円未満:3万円、100万円〜300万円:4万円、300万円以上:5万円)合同会社:不要・登録免許税株式会社:15万円または資本金額×0.7%のいずれか高い方合同会社:6万円または資本金額×0.7%のいずれか高い方資本金とは、最初に事業を円滑に進めていくために準備する会社の運転資金のことです。法人を設立してすぐは利益がありません。その期間の運転資金として、用意されるのが資本金です。資本金の金額は、会社の信用度にかかわります。法人を設立してすぐの運転資金でもあるため、あまりに少ない場合は「会社に体力がない」「資金調達力がない」といった理由で信用を得られないことがあります。法律上、1円からでも法人を設立できますが、クライアントとの取引や、融資を受ける際にも不利となる可能性があるでしょう。経済産業省の「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計」によると、1,746,142社の中で、「資本金1000万円未満」の企業が最も多く59.3%を占めています。「資本金1000~3000万円未満」が31.8%、「資本金3000万円~1億円未満」が7.2%、1億円以上が1.7%となりました。同じ業種の会社の資本金相場も参考にしながら、事業を行うための初期費用、運転資金がどれくらい必要かを想定しましょう。資金調達の方法と注意点先述の通り、法人設立には大きな額の資金が必要となります。資金の調達方法は、大きく分けて以下の3つです。・自己資金を用意する起業家自身の個人的な資本で事業を始めることもできます。融資や借入と異なり、返済する必要がありません。そのため、金利を負担する必要もなくなります。また、資金を自分で用意しているため、出資先などとのトラブルもなく、経営に関しても主導権を持つことができます。一方で、個人資産となるため、基本的には大きな額を用意することが難しく、事業が小規模になる傾向があります。また、自身の財産を失うリスクがある点にも注意が必要です。・出資を受ける「出資」とは、事業を始めるために団体や個人から資金を提供してもらうことです。出資による調達方法にも、さまざまなパターンがあります。他の企業に株式を売る(株式会社の場合)ベンチャー企業への投資を行う会社(ベンチャーキャピタル)から出資を受ける個人の投資家(エンジェル投資家)から出資を受けるクラウドファンディングを行う出資という形であれば返済する必要もなく、少ない負担で資金を用意できます。ただし、株式の50%以上を譲渡してしまうと、経営権が失われる点に注意が必要です。また、上場が期待できる会社を相手にしている投資家や投資会社から出資を受ける難易度は高く、起業直後の場合は難しいとされています。・借入、融資その他、起業家本人が家族や周囲の人から資金を借り入れたり、金融機関などから融資を受けたりする方法も挙げられます。どちらも出資の場合のように、経営権の影響などを考えずに済む点がメリットです。融資の場合は、資金を借りる前に審査を受けなければなりません。また「担保を用意する必要がある」「金利が高い」など、起業したばかりではハードルが高い場合があります。一方、立ち上げ直後の企業向けの制度を用意している機関の制度を利用する方法も一つです。詳細は、次の「起業支援制度や補助金の活用」で解説します。借入、融資のデメリットとしては、負債が発生することが挙げられます。期日までに返済できなかった場合は、会社の信用低下が懸念されるでしょう。特に融資の場合は、利息が発生します。返済が遅れると、延滞利息が追加されることもあるため、注意が必要です。こうしたメリット、デメリットを踏まえ、資本金の一部は自己資金を用意し、残りを借入・融資でまかなう形をとる企業もあります。起業支援制度や補助金の活用起業に伴う資金調達に関しては、国や自治体、金融機関が支援制度を用意しています。各制度が設けた条件に当てはまる場合、補助金・助成金が受け取れたり、融資が受けられたりするものです。「担保や保証人が不要」「金利を抑えられる」など、立ち上げ直後の会社向けにメリットの大きいものとなっています。たとえば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、創業者やスタートアップを支援する目的で、無担保・無保証人で融資が受けられます。その他、各自治体が用意している支援制度はそれぞれ制度名や条件、支援内容が異なるため、事前に調べてみましょう。また、事業構想大学院大学では、そのような起業支援や補助金など融資にあたって必要となるような、事業の概要やビジネスモデル、収支計画などをまとめた事業構想計画書を2年間かけて策定していきます。インターネットを介した「クラウドファンディング」によって資金調達をする手段もあります。自身の実現したい事業や目標を発信し、それに共感した個人から出資を受ける方法です。クラウドファンディングのメリットは、負債などのリスクを抱えることなく挑戦できる点にあります。また、全国各地の人に呼びかけることができるため、幅広い共感が得られれば、資金調達はもちろん、事業前からファンを獲得することにもつながります。ただし、多くの人から共感を得るためには、熱意や事業の中身の濃さ、出資するメリットを感じてもらえなければなりません。期日までに確実に資金が調達できる確証がない点にも注意が必要です。起業のリスクとその回避策起業には、リスクや失敗もつきものです。ここでは起業に伴うリスクとその回避策を紹介します。起業の失敗例とその原因特に起業の失敗例として挙げられるのが、運転資金不足です。また、運転資金が不足する原因も、さまざまなものが挙げられます。経費が抑えられず、利益が出ない見込んでいたほど売上が立たなかった売掛金を運転資金が必要な日までに回収できなかった(黒字倒産)事業を進めていくためには多くのコストが経費として発生しますが、収益がそうした経費を上回らなければ事業が維持できません。また、集客・営業に関するノウハウが不足している場合は、商品やサービスが売れずに売上が立たなくなることも考えられます。また、売上が出ているのに廃業を余儀なくされる「黒字倒産」と呼ばれる失敗も少なくありません。商品やサービスが売れてから、実際に利益として売掛金が回収できるまでの期間が長く空いている場合、運転資金が必要な日までに回収できずに立ち行かなくなるケースもあります。運転資金に関するもの以外にも、起業が失敗する原因はさまざまです。起業自体が目的となっており、その後モチベーションが続かなかった労務や税務の知識がなく、人を雇えなかったビジネスパートナーと決別した起業家向けの悪徳なセミナーやコンサルタントに騙された店舗の立地を誤った起こした事業がうまくいかなかった場合、主に金銭的な面で大きな負担を強いられることとなります。「起業にはリスクが伴う」ことを十分に理解した上で、リスクを最小限に抑えながら事業を進めていく計画性が重要です。リスクを最小限に抑えるための対策起業にはリスクが伴うことを十分に理解した上で、最小限にリスクを抑えられる対策をとっておくことが求められます。事業計画・資金計画を細かく考えることはもちろんですが、特に重要なのが「小規模の事業から始めること」です。小規模の事業からスタートすることで、少ない資金でビジネスを始めることができます。リスクも少ない分、軌道修正やチャレンジもしやすいです。そこから得られる学びを活かしていくことで、徐々に事業拡大へとつながります。始めは細くとも、リスクを最小限に抑えながら長く続けて事業を成功させていく道筋をイメージしておきましょう。成功する起業家の共通点とは?起業家として成功する人には、大きく以下の3つの要素が備わっている傾向にあります。将来性のある事業を発見できる起業や経営に必要な知識を備えている同じ志を持つビジネスパートナーがいるまず、起業には「事業の構想」が欠かせません。社会の流れや市場を読み取り「未来のより良い社会」につながる、将来性のある事業を構想する必要があります。その事業構想には、たくさんのアイデアを創出できる思考力や体力が必要です。また、事業計画や資金計画を立てながら事業を進めていくためには、ビジネスに関する幅広い知識やスキルも求められます。起業のために備えておきたい知識起業する分野や市場に関する専門知識経営マーケティング会計などのお金の知識事業運営に関係のある法律広報、集客 など起業のために備えておきたいスキルプレゼンテーションスキルコミュニケーションスキルデータ分析能力リーダーシップ など起業する分野に関する知識はもちろん、経営、マーケティング、集客、会計など、起業家自身がある程度理解しておかなければ、事業がうまく立ち行かないことも想定されます。そうはいっても、起業家一人がすべての知識やスキルを完璧に備えることは困難でしょう。そこで支えとなるのが、ビジネスパートナーや従業員です。自身に足りない部分を補い、同じ目標を持って進んでくれる仲間がいれば、事業も前向きに進められます。起業家に必要な知識、スキルを身につけるために、実際に起業経験のある人のセミナーを受けたり、必要な知識が得られるビジネススクールに通ったりするのもよいでしょう。例えば事業構想大学院大学では、事業構想だけでなく、その運用に必要な幅広いビジネススキルについても学ぶことができます。経営、マーケティング、イノベーション、アイデア発想など、事業構想に不可欠な専門分野を持つ教授や、年間150人を超えるゲスト講師による授業を通じ、起業に必要な知識を身につけられます。また、大学院での人との出会いが、その後のキャリアにプラスの影響を与えてくれるでしょう。起業後の経営戦略と拡大方法起業後は、経営戦略を立てながら、事業拡大に向けて計画的に動いていく必要があります。ここではその例として、起業後に考えるべきことについて紹介します。新規事業の立ち上げとブランディングさらなる事業拡大を目指す方法として挙げられるのが、新規事業の立ち上げです。一つの事業で業績が好調な場合、新しい事業に挑戦して市場シェアや顧客の幅を広げることで、事業拡大につながります。事業拡大の際に、意識すべきなのが「ブランディング」です。ブランディングとは、自社製品やサービスに対するイメージや信頼を構築し、自社ならではの価値を向上させるマーケティング戦略を指します。新しい事業を立ち上げる場合も「自社のビジョンやミッション、既存事業とリンクするもの」「自社の持つノウハウや強みを活かせるもの」を追求することで、会社のブランド価値向上につながるでしょう。新規事業立ち上げの際は、より会社の価値を高められるよう、ブランディング戦略についても視野に入れることが重要です。マーケティングと顧客獲得の戦略経営戦略が、事業に欠かせない「ヒト・モノ・カネ」を中心とした活動に対する戦略であるのに対し、マーケティング戦略は「自社の商品やサービスを市場により深く浸透させるため」の戦略です。事業拡大を目指す方法の一つとして、このマーケティング戦略を練り直すことが挙げられます。具体的には、売り方を変えたり、自社の商品やサービスに独自の価値をアピールしたりすることで、新たな市場や顧客の獲得を目指す方法です。効果的なマーケティング戦略を立てるためには、基本知識や成功している会社のセオリーを学ぶことも重要です。「競合」「自社の商品やサービス」「顧客」のことをよく分析した上で、市場シェアの拡大や認知度の向上、顧客の拡大を目指していきましょう。事業拡大のためのパートナーシップと提携新たな事業を拡大していくための手段として、外部企業とパートナーシップや提携を結ぶことも挙げられます。「パートナー戦略」と呼ばれる方針です。企業におけるパートナーシップは、一部の業務を外注する「アウトソーシング」とは異なります。お互いのノウハウと実績を掛け合わせ、ビジネス成長やイノベーションを目指すことで、事業拡大を進めていく方針です。たとえば、飲食店がキャッシュレス決済サービスを行う企業や、デリバリーサービスを提供する企業と提携すれば、互いにさらなる顧客獲得につながります。提携することを通じて、互いに情報やノウハウが得られる点も大きなメリットです。特に、デジタルテクノロジーの発達などによって急速に変化する時代においては、互いの強みを活かしながら協力するパートナー戦略が、事業拡大において欠かせない手段となるでしょう。まとめ - 起業に必要な知識やスキルを身につけよう新しい事業で成功するためには、事前の準備はもちろん、起業後に成長し続ける姿勢も欠かせません。「起業すること」をゴールとするのではなく、たくさんのアイデアの中から実現したい事業を見出し、それを成功させるまでの長期的な視点で目標を立てることが重要です。「起業や新規事業の立ち上げに必要な知識やスキルを身につけたい」という方には、事業構想大学院大学への入学もご検討ください。事業構想大学院大学では、MPD(事業構想士)の取得を目指すカリキュラムを展開しています。企業、地域、社会に求められる事業のアイデアをゼロから生み出し、それを実行する力を育成します。また、経営、財務・会計・経理、IT、商品開発など、事業構想や起業に不可欠な分野についても合わせて学習できます。詳細については、下記ページもご参照ください。事業構想修士(MPD)とは