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現役院生

多様な発想法を会得し、「ゼロイチ」の苦手意識克服へ

 

 

 

〈プロフィール〉

塩嵜 弘騎さん

和歌山県東京事務所

東京校2022年度入学

 

和歌山県御坊市出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、東京電力で5年間勤務した後、2014年に和歌山県庁へ。

公共事業用地の買収、地籍調査などの仕事を担当した後、現在は東京事務所で企業誘致を担当している。

小2の頃からソフトテニスを始め、高校でインターハイ優勝、大学でインカレ優勝2回、天皇杯優勝、和歌山県庁に戻ってからは国体成年男子優勝の経歴を持つ。2年前に引退し、現在はU-14日本代表のコーチと早稲田大学軟式庭球部のコーチを務めている。

 

 

日本一極めたソフトテニスを引退し、新たなチャレンジへ

 塩嵜さんは、和歌山県東京事務所で企業誘致の仕事を担当している。東京に本社を置くIT企業を中心に訪問し、県内に立地した際の補助金制度などについて説明し、現地を視察案内した後、サテライトオフィス設置につなげる流れだ。「視察に案内するまでは長い道のりですが、視察にまでたどりつけばそのうちの半数は進出を決めていただいています。特にコロナ禍以降はリモート勤務のハードルが下がり、興味を持っていただく企業が増えています。和歌山県出身の学生にとっても県内でスキルを生かせる先が増え、喜ばれています」と手応えを感じている。

和歌山県は東京事務所で勤務する職員に事業構想大学院大学で学ぶ機会を設けており、塩嵜さんに対しても東京事務所勤務が決まった際に打診があったという。塩嵜さんはソフトテニスで日本一を極めた経験を持ち、県庁でも選手を続けていたが、ちょうど東京事務所への赴任の打診があった頃は引退を決めたタイミングとも重なっていた。「それまでソフトテニスに打ち込んできたこともあり仕事に対しては自信を持てない部分もありましたが、新しいチャンスをいただいたと思いチャレンジすることにしました」と話す。

 

 

当初の不安は払しょくし、「やる気MAX」に

 

取り組むテーマについてはまだ最終的に定まっていないと言うが、今のところ以下のテーマの中から絞ろうと考えている。

一つは、ソフトテニスの指導を通じて実感した中学校の部活動における指導者確保の問題だ。生徒数減少に伴う部活動の縮小、教員数の減少と負担増などを背景に、国は令和8(2026)年度以降、学校教員が担ってきた部活動の指導を、地域団体や関係事業に担ってもらう、いわゆる地域移行を進めることとしている。「部活動の場を存続させるとともに生徒が好きなクラブを選ぶことができるためにもどのように指導者を確保するかが大きなテーマになる」ととらえている。

二つ目が、選手としてかかわってきたソフトテニスの地位向上だ。「プレー人口も多く、実業団チームも200ほどあるのですが、プロとして食べていけるスポーツにまでは育っていません。多くのスポーツがプロ化し、またプロ化を目指して動いている中で、ソフトテニスも夢のあるスポーツにできないかと考えているところです」と思いを語る。

さらに三つ目として挙げるのが、スポーツ選手のセカンドキャリアの問題だ。「僕自身、ソフトテニスの選手を辞めた時、いざ仕事に気持ちを切り替えないといけないと思いながら、目標を見失ってしまい気分が落ち込んでしまいました。そんな時に私の上司や同僚が私に寄り添い常に相談できる「場」を提供してくれました。私の場合はたまたま上司や家族に恵まれ、一皮剥けた新たな人生として再出発することが出来たが、世の中には人や環境に恵まれない人もいると考え、自分がその人を助けたいという想いが強くなった。そのような経験から人に寄り添い相談できる「場」の提供ができればと感じています。そしてその善意の循環が巡り巡って、世界をより良い形へ導きたい」と自身の境遇に重ね合わせて、その必要性を説く。

入学を決めた当初は、「新事業創出や起業を考えている人の中でついていけるだろうか」という不安でいっぱいだったという塩嵜さんだが、いざ講義が始まってからは周囲から大いに刺激を受けているという。「僕自身はゼロから一を生み出すことに苦手意識を持っているんです。ただ、おそるおそる口にしたことでも先生やクラスメートが私の言葉を上手に拾って、こういうふうに考えればやれそうだからやってみよう、という方向に持っていってくれるんです。ついていくのに必死ですが、今はめちゃくちゃやる気MAXです」と話す表情からは充実感が見て取れる。

 

 

見過ごしていたものの意味を考えるクセがつく

 

数ある講義の中でも刺激を受けていると話すのが、事業構想研究所副所長も務める丸尾聰客員教授の講義だ。「例えばこの紙コップを見て絵を描いてきてくださいと言う課題が与えられるんです。絵を描くためによくよく眺めてみると、縦に線あったり、飲み口の淵が丸まっていたり、底が上げ底になっていて空洞ができるようになっていたり、と様々なことに気づくことができます。それぞれがなぜそのような構造、形状になっているのかを考えるわけですが、じゃあその機能を持たせるために自分だったらどうするかという議論を交わしていくんです。細部に至るまでの構造、形状にそれぞれしっかりと意味があるのだと思うと、今まで日常生活で見過ごしていたものに注意が向くようになり、これはなぜなんだろうと考えるクセが付くようになりました」と話す。

岸波宗洋教授の講義からも刺激を受けているという塩嵜さん。「岸波先生からの授業では、本当に自分を知らないとパッションは生まれてこないという思いから、自分を客観的に深掘りする作業をするのですが、その作業を通じて事業構想をする意味を考えることができました」と話す。そして「クリエイティブというキーワードひとつとっても、先生によって切り口が異なり、すごく勉強になりますね」と付け加えた。

さらに、塩嵜さんにとって大学院で一緒に学ぶ学生との交流は何より大きな価値があるという。「社会人になると同じ組織の中でも上下関係があったりして心許せる友達ができにくいのですが、ここでは年齢、性別を超えて利害関係のない人たちと本音をしゃべることができます。僕自身が悩んでいることに対して真剣に相談に乗ってくれる人がたくさんおり、友達といえる存在の人がたくさんできたのが何よりの財産です」と語る。

 塩嵜さんのような公務員が事業構想大学大学院で学ぶ意義について、「公務員の方は日々のルーティンの仕事を効率よくさばくことには長けていても、ゼロから1を生み出すことは苦手な人が多いのではないでしょうか。これからの地域はますます他地域と違うことを生み出すことが求められていくと思うので、自分の殻を破ってみたい、自分を変えてみたいと思っている方はぜひ扉を叩いてほしいと思います」と呼びかけている。

 

 

塩嵜 弘騎

塩嵜 弘騎

(しおざき・ひろき)
和歌山県東京事務所
東京校11期生(2022年度入学)