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現役院生

へき地へ、海外へ、そして医療機器開発支援に携わる

 

 

〈プロフィール〉

小鯖 貴子 さん

東北大学病院臨床研究推進センター バイオデザイン部門 助手

仙台校2023年度入学

 

2006年、岩手県立宮古高等看護学院卒業後、東北大学病院(高度救命救急センター看護師)へ。オーストラリアでの看護インターン(介護士)を経験し、帰国後は認定NPO法人ジャパンハートに所属し、看護ボランティアを務める。2017年にラオスで医療プロジェクトに携わり、メディカルコーディネーター、プロジェクトマネージャーを務めた後、2020年7月より現職。

 

小鯖さんが東日本大震災に遭遇したのは、東北大学病院の高度救命救急センターで看護師をしていた時のこと。それまでは組織で人をどう動かしていくかということに興味を持ち、管理職を目指そうとしていたが、震災の被災者への医療対応に追われるなかで出会ったボランティア団体の人たちと接して突き動かされるものがあったという。「ボランティアの方たちから、現地に根付いてその土地の人たちから信頼を得ることを大切にしている、という言葉を聞き、私自身もそういう人になりたいと思ったんです」。東北大学病院を退職し、へき地や離島、そして開発途上国へ自ら入り込んで、医療従事者として何をすべきかを常に考えながらさまざまなサポートを行ってきた。「看護師の中でもかなりユニークなキャリアを積んできたと思っています」と語る。

 現在は、東北大学病院において企業が医療機器開発を行う上で必要なニーズ探索の支援を担当。52ある診療科の協力を得て、医療機器、材料、システムなどの開発を担う企業の人たちに医療現場を実際に見てもらうことで、企業が持つシーズに医療現場のニーズを組み合わせて開発が行えるようサポートをしている。

 

多彩な経験をふまえ3つの事業構想に取り組む

 国内外で様々な医療現場に足を踏み入れることでしばしば限界を感じることもあったという小鯖さん。「ラオスでは医療費が前払い制なのでお金がないと点滴すら打ってもらえません。そもそも根本の経済のところから考えていかないと前に進まない現実がありました。自分が助けたいと思った人を助けられる仕組み、枠組みをしっかり考えたいと思い、事業構想大学大学院への入学を決めました」と話す。

 現在は、複数の事業を構想している。まず、ラオスで医療体制が不十分なために亡くなってしまった子どもたちを見てきた経験をふまえ、「開発途上国の人たちが国外で受診できる仕組みを作れないか」ということだ。ただ同様のことを目指したプロジェクトは動いているといい、「わたし自身の個性や強みを活かせる事業」として二つ目に考えているのが、人材育成だ。「大半の看護師にとって病院外でキャリアを積むことは難しい。看護師と言う資格を生かしながら開発途上国での医療支援、医療機器開発支援を経験してきたわたしだからこそできる、多様なキャリアを後押しするサポートができれば」と考えている。そして3つ目が、開発途上国で医療機器開発のニーズを探索する事業だ。「現状の医療機器開発は先進国のニーズをふまえて行われているのですが、開発途上国ならではのニーズもあります。開発途上国の医療現場をフィールドにした仕組みがつくれないかと考えています」。

 

視野を広げ医療現場にフィードバックしたい

 これらの構想をふまえ事業構想大学院で学んでいる小鯖さんにとって現時点で得られた学びの成果は「これまでは医療分野の人たちとばかりしか話をすることがなかったので非常に視野が広がりました。医療分野に携わってきたことで着いた考え方の癖についても先生や同期生の方からフィードバックをいただき、客観的に物事を見る大切さにも気付くことができました。企業で実践を積んできた先生とアカデミアのバックグラウンドを持った先生の両方の視点からアドバイスがいただけることもありがたいですね」と語る。

 受講している講義のなかでも新鮮だったというのが太田卓也特任教授の「ブランド戦略」だ。「それぞれの人の物事のとらえ方でブランドが形作られていくという考え方に感銘を受けました。まちの風景を眺めているときでもこれまでは情報が向こうから入ってくるという感覚でとらえていたのですが、それらの情報を自分の中でどうとらえどう見ているかということの方が大事なのだということに気づかされました」。また奥村隆一特任教授の「クリエイティブ発想法」は、「ロジックツリーの使い方やベン図の活用法を学ぶなかで、AIではできない人間ならではの発想をそれらの手法を使っていかに導き出すことができるかが学べたことも興味深かった」と語る。

 全国の事業構想大学院では医療従事者からの入学問い合わせも多く寄せられている。「海外に出て日本の医療の特殊性に気づけたように、事業構想大学院大学で学んだことによって医療現場そのものの特殊性も見えてきました。外から病院を見ることで変えていかなければならないことへの気づきが生まれます。ぜひ外の世界にも視野を広げ、医療現場に還元してほしいと思っています」。

 

 

小鯖 貴子

小鯖 貴子

(こさば・たかこ)
東北大学病院臨床研究推進センター バイオデザイン部門 助手
仙台校2期生(2023年度入学)