地域にコミュニティを取り戻す事業を構想

 

＜プロフィール＞

宮本 功さん

株式会社GF新事業企画室長

大阪校2023年度入学

 

フリーのアパレルデザイナーからスタートし、大手警備会社の社員、ラーメン店主、注文住宅会社の営業マンを経て、自然エネルギー設備の開発、オペレーション、メンテナンスまでを事業とする株式会社GFに入社。現在は新事業企画室長を務める。

 

後継者候補の条件は大学院で学ぶこと

多彩なキャリアを経て、現在は株式会社GF（徳島県阿南市）で働く宮本さん。GFは、現在2026年の完成を目指して風力発電設備を建設するなど、地域における自然エネルギーの普及を目指し、発電施設の開発にとどまらずオペレーションからメンテナンスまでを担う事業を展開している。そのなかでも宮本さんは新事業企画室長として、主に自治体向けに自然エネルギー導入を提案する業務に従事している。

宮本さんは会社から派遣されて事業構想大学院大学に通っているが、そこに至る経緯はユニークだ。「社長が2年前に、『５年後に社長交代する』と公言したんです。そのときに後継者候補を5人指名したのですが、私もその一人に選ばれました。5人に対して付けた条件が、事業で社会的課題を解決するという視座に立つためにそれぞれ大学院で学んできてほしい、ということでした。どこに通うかはそれぞれの判断にゆだねられ、大半はMＢＡを選んだのですが、私は、企画職を担当していることもあり、より実践的なことが学べそうな事業構想大学院大学を選びました」と語る。

 

苦手だった勉強が好きになった

月曜日と水曜日は徳島市の自宅でオンライン受講し、木、金、土曜日は、会社から宿泊費を出してもらい大阪のホテルに泊まりながら、昼間はオンラインで仕事をし、夜は講義に参加している。入学当初は不安でいっぱいだったという宮本さん。「多くの仕事を経験し、幅広い視野は得られたものの、深い専門知識は置き去りにしてしまっていました。加えて読書が苦手で、最初はどうなるかなと思っていました。ところが、先生方は基礎からしっかり教えてくださいますし、わからないところは聞けば教えてくださるので、何とかついていけています。オンラインは録画したものが見れますし、文字起こしもしていただいてるので、文章を見ながらだとより深く理解できて助かっています」

授業の中でも大好きだというのが二村暢朗特任教授が主宰するゼミだ。「教え方も柔らかくてすっと頭に入ってきますし、ひらめきのヒントを的確に教えてくださり、しかも私たちがそこに気づけるところまで導いていただけるのがありがたいですね」。藤井康弘教授の「クリエイティブ発想法」からも大いに刺激を受けている。「藤井先生は毎回のフィードバックのレポートでわからなかったことを書くとすぐに答えを返してくださいます。頭の整理に使わせていただいてます」。田村典江専任講師の「地域活性」は「私の仕事にかかわる地方をどう創生していくかについて多くの事例で説明いただくので興味深く聴いています」。そして「勉強は苦手だったのですが。事業構想大学院大学に入学してから好きになったかもしれませんね」と笑顔で語る。

 

地域にコミュニティを取り戻す事業を構想

　現在仕事では、自治体向けに太陽光発電設備の導入で脱炭素化の推進を図る一方、発電設備を非常用電源として防災時に役立てる提案を行っている。「いざというときに使えないと意味がないので、避難所で住民の方が使う際にも簡単に使えるように仕組みを整えました。実はその発想は事業構想大学院大学で学ぶことで思いついたアイデアなんです」とさっそく学んだことが実践にも生かされているという。

地方の人口減少はさらに進んでいく。宮本さんは仕事を通して「自然エネルギーを普及させながら地域に産業をどう根付かせていくかを考えています。自然エネルギーインフラを整備して得られた収益を使って他の産業も同時に構築していければよいなと。しかも地方でそのモデルを実現させていきたい」と意気込みを語る。一方で、事業構想大学院では本業で関わる公助とは別に地域に貢献できる共助につながる事業を模索しているという。「地方でさえ現在は地域のコミュニティが希薄化しつつあります。何か困り事があった時に助け合える関係をもう一度取り戻したいなと思っています。その一つの手法として、地域の中でそれぞれがいらなくなったものを循環させる仕組みを構築するというアイデアを具現化しようとしているところです」。公助、共助から自助へと至る道筋を整え、地域が持続できるあり方を模索しながら、宮本さんの知の旅は続く。