院生紹介
豊富な知見と実務経験を有する社会人院生たち。
社会の一翼を担う事業を創出する人材を、多数輩出している事業構想大学院大学。
幅広いフィールドにて事業構想を実践しつづけている、院生の活躍を紹介します。
山本 大貴
福岡校15期 [2026年度入学]
テクノデザイン株式会社 企画室
「継ぐ」だけではなく、経営者として事業を構想する力を。
―まず、現在のお仕事について教えてください。
熊本のテクノデザインという会社で、半導体の製造装置や産業機器の組み立てを請け負う仕事をしています。
新卒から東京の半導体メーカーで設計の業務に携わっていましたが、4~5年ほど働いた後、退職して熊本にUターンし、家業である今の会社に入りました。入社してから最初の3~4年は、各部署の現場を回りました。4つの部署をそれぞれ1年弱ずつ経験して、今年の春から企画室に入っています。
そして、この秋頃からは、社長である父の仕事を実際に一緒にやっていく予定です。所属は企画室のままですが、本格的に経営を引き継ぐ準備に入っています。
―家業の承継が、かなり現実的になってきたのですね。
もともと「いつ」という具体的な話が決まっていたわけではありません。ただ、以前から「早めに」とは言われていて、今年の7~8月頃に具体的に引き継ぎに向けて動こうという話になりました。
なので、事業構想大学院大学に入学した時点では、まさか半年後にこんなに具体的な承継準備に入るとは思っていませんでした。
―なぜ事業構想大学院大学で学ぼうと思われたのでしょうか?
会社に入って、いろいろな部署を回る中で、「このままでいいのかな」と感じていたことが大きく二つありました。
一つは、社員の方から「これだけできるのであれば、自社の製品を持てるんじゃないか」という声を多くもらったことです。確かに、会社として長年培ってきた知見や技術はあります。でも、それをどうやって新しい製品や事業にしていくのかが、当時はよく分かりませんでした。
もう一つは、会社として30年以上事業を続けてきた中で、一部の事業がライフサイクルでいう「衰退期」に入ってきていると感じたことです。
経営として考えれば、撤退や事業転換も必要になります。でも、せっかく30年以上やってきた中で蓄積した知見やノウハウを、そのまま失ってしまうのはもったいない。何とか別の事業や業態に変えていけないか。そう考えるようにもなりました。
―そこで「事業構想」を学ぼうと。
はい。後継者同士のつながりから、事業構想大学院大学福岡校の修了生でもある古賀金属工業の古賀社長と出会ったことが大きかったです。大学院での学びや研究についてお話を聞き、「これだ」と思って飛びつきました。
後継者として事業承継を専門的に学びたいというより、一人の経営者として「事業構想」を考え、実現できる力を身につけたいという気持ちが大きかったです。
―実際に入学して、約半年が経ちました。率直な感想はいかがですか?
とにかく、めちゃくちゃ脳が刺激されます。
これまでも財務関係など、いろいろな研修を受けてきました。知識をインプットして、それを実践するというものが多かったのですが、MPDでは、考え方そのものを変えるとか、価値観そのものを変えるような話が多いんです。
グループワークでも、年齢もバックグラウンドも仕事も、本当にいろいろな人がいます。そういう人たちと話していると、自分一人では絶対に思いつかないような発想が出てくるんですよね。
―授業では、知識を得るというより、自分で考えてアウトプットすることが多いのでしょうか?
例えばクリエイティブ・シンキングの講義では、最初に教授から「こういう考え方でやってみよう」というインプットはあります。でも、そこからは自分たちで題材を用意して、実際にやってみたり、いろいろな価値観を混ぜ合わせたりしていく。そこで出したアウトプットに対する教授からのフィードバックが、また刺激的です。
最初は、自分で議論を展開していくことに不安を感じる人もいると思います。でも、MPDの環境の中でこれを繰り返していくと、「何を言ってもいいんだ」という安心感が生まれてきます。
―山本さん自身も、そうした変化を感じていますか?
かなり感じています。
僕自身、結構内向的な性格で、最初は進んで意見を出せないタイプなんです。でも、一緒にいる人たち(同期や先輩院生)は、そんなことを許してくれない(笑)。
「もっと言えよ」という感じで、変なことを言っても拾ってくれるんです。「こんなバカみたいなこと言っていいのかな」と思うことでも、そこから意外と実現できるところまで持っていけたりする。
そういう経験があると、「言ってみてよかったな」と思います。
―同期の皆さんとの関係はいかがですか?
すごく仲がいいです。
年齢も違えば、所属している会社での役職も違うし、職種も全然違います。普通に生活していたら、なかなか出会わないような人たちと、フランクに話せるのはすごくありがたいですね。飲みに行ったりもしますし、これまで他でいろんな研修にも参加してきた中で、「こんなに仲のいい人ができるんだ」と、ちょっと面白く思っています。
―同期のつながりが、仕事に活きることはありますか?
ありますね。例えば、同期の中野さんはBCPに詳しい方なんですが、僕もちょうど会社でBCPをつくっていたので、「いつか教えてください」とずっと言っていました。実際にリアルで会えた時に、いろいろ教えてもらいました。
ほかにも、事業構想だけではなく、本業のことで「ちょっと紹介してくれないか」と相談することもあります。もちろん、大学院に来て営業活動をしているわけではありません。でも、お互いの構想や本業について深く知っていく中で、「これだったら、この人に聞いてみよう」と自然につながっていくんですよね。
―授業を通じて、思いがけない出会いもあったそうですね。
そうなんです。先月は、石井先生の授業でゲスト講師として来ていただいた方が関わっている、カンボジアでの活動を見学させてもらいました。さらに、カンボジアに行くと大学院で話していたら、平井先生から「現地に福岡校の修了生がいるよ」と教えていただき、その方にもお会いすることができました。
入学前には、まさか自分がカンボジアに行くなんて思っていなかったです(笑)。でも、自分の考えている構想とは直接関係なくても、そういう場所に行って、実際に現地を見ること自体が面白い。
「何が起きるか分からない」というのも、MPDの面白さなのかもしれません。
―現在、研究として取り組んでいる事業構想について教えてください。
実は、入学から半年で事業構想を二つ考えたんですが、両方とも一度ボツにしています(笑)。ただ、根底にあるアイデアは共通しています。
僕は熊本出身で、今も熊本で働いています。熊本では半導体が注目されていますが、その下支えをしている半導体製造装置関連の企業もたくさんあります。そうした企業では、ピーク時と閑散期の差がかなり激しいんです。
忙しい時には、本当に36協定の上限ぎりぎりまで働く。それでも仕事が終わらない、ということもあります。そういう働いている方たちを、少しでも楽にできるような事業を考えたいと思っています。
―社会的にも重要なテーマですね。
自分自身が会社の現場を経験してきたからこそ、そこで働いている人たちの大変さは分かります。ただ、まだ「これだ」という形にはなっていません。
いろいろな方が悩んでいる課題でもあると思うので、どういうアプローチができるのか、これから考えていきたいです。
―今週末には1年次中間発表会を控えています。
今回の中間発表では、今考えている構想アイデアを一つ発表します。ただ、最初から「これが完成形です」というつもりではありません。実現可能性も考えていくと、絞って、また出して、ということを何度も繰り返す必要があると思っています。
―最後に、これからのMPDでの学びと研究についてお話ください。
この秋から、仕事の面でもかなり忙しくなると思います。
でも、MPDは講義自体が楽しいので、「やらなきゃいけない」というより、「やりたい」という気持ちで取り組めています。
熊本からの通学ですので、オンラインでの受講が多くなりますが、やっぱりできればリアルで参加した方がいいな、というのは感じています。熱量やコミュニケーションの部分では、直接会うことの良さがありますから。
ただ、設備はきちんと整っていますし、Miroなどのツールを使ってディスカッションも問題なくできます。オンライン同士で仲が深まったりすることも面白いです。オンラインだから研究の充実が薄くなる、ということはないと思っています。
そして、これから本格的に承継に向かう中で、後継者として社内では話しにくいことも出てくると思います。
だからこそ、大学院という、少し会社から離れた場所で、先生や同期の皆さんにざっくばらんに相談できる環境はありがたいです。
残り一年半、いろいろな人の考えに触れながら、まだまだ自分の価値観を揺さぶっていきたいですし、一人の経営者として、事業を考え、実現する力をつけたいと思います。